年金の繰上げ受給とは、原則、65歳からの年金受給を、60歳~64歳に繰上げて受給できる制度です。
厚生労働省の報告によると、令和元年で年金繰上げ受給を29.5%の方が選択なさっています。
さて、この年金の繰上げ受給は、夫の年金、妻の年金のどちらか一方、あるいは一緒に申請できますが、もし、私が、繰上げ受給を選択する場合には、私の年金のみを繰上げ支給するでしょう。
それでは、その理由を以下に記載します。
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夫の年金のみを繰上げた方がお得な理由
夫の年金の繰上げ受給の減額は、夫の死後、奥様の年金に影響しない
繰上げ受給をすると、年金受給額が、毎月0.5%減額されます。60歳まで繰上げると、30%の減額となります。結構、大きな減額です。
夫の年金、老齢基礎年金と老齢厚生年金を繰上げ受給しますと、当然、どちらも毎月0.5%ずつ減額されます。
そこで、仮に、夫が亡くなった場合、奥様の年金は、ご自身の老齢基礎年金と遺族厚生年金になりますよね。
この遺族厚生年金は”くせもの”で、繰上げ受給選択により減額された老齢厚生年金の3/4でなく、当初の65歳で受け取ることになっていた老齢厚生年金の3/4になります。
すなわち、夫の年金の繰上げ受給による減額は、夫の死後、奥様の年金には影響しないことになります。驚きませんか?(笑)
これが、第一の理由です。
奥様の長生きする確率が高く、長生きすればするほど受給総額は大きくなる
2019年の女性の平均寿命は87.45歳、男性の平均寿命は81.41歳で、言うまでもなく、奥様の方が長生きする確率は高くなります。
したがって、先に夫が亡くなられ、奥様の方が残されるケースが多くなりますので、奥様の受け取る年金を少しでも多くする、すなわち夫の年金のみを繰上げる方が賢明な選択と思います。
また、夫婦で受給する年金総額も、奥様が長生きすればするほど、高くなります。
この2つが、私の夫の年金のみを繰上げ受給する理由です。
多分、すべての奥様は、この選択に対して、満足して感謝するでしょう。
ただし、老齢厚生年金と老齢基礎年金は一緒に繰上げする必要がありますので、夫がサラリーマンの場合には、削減される金額が大きくなりますので、ご注意願います。ご判断は、ご夫婦でご相談の上、お願いします。
さて、この繰上げ受給は、年金制度改正により、2022年より選択しやすくなります。
この背景には、平成27年度に、繰上げ受給を35.6%の方が選択していましたが、年々、受給する方が減少し、令和2年度29.5%となったことが影響していると思います。
以下に繰り上げ受給に関する改正内容を記載します。
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2022年以降の繰上げ受給に関する改正内容
減額率が0.5%から0.4%へ
今回の改正で、2022年より減額が0.5%から0.4%となります。
その結果、60歳まで繰上げた場合、24%の減額となります。
60歳まで年金を繰上げ支給した場合と通常通り65歳から年金受給した場合の受け取り総額を比較すると、80歳10か月より、65歳から年金受給した方が総額は多くなります。
この80歳10か月を損益分岐点といいますが、現状の0.5%減額の時の損益分岐点は、76歳8か月ですので、4歳2か月も伸びています。
在職老齢年金の改正で、合計の上限額が28万円から47万円へ
60歳以降も働く場合は、在職老齢年金の制度により、受け取る老齢厚生年金と給与の合計が28万を超える場合は、年金が減額されます。
この28万円が、2022年より47万円となり、働きながら年金を受け取りやすい環境になります。
上記のように、繰上げ受給を選択しやすい環境整備がなされますが、この繰上げ受給には、注意するべき点があります。
それを以下に記載します。
繰上げ受給を選択する際に注意するべき点
年金を繰上げ受給すると、以下のデメリットがあります。よく注意して、繰上げ受給を検討するべきと思います。
・障害年金が受給できなくなる
・寡婦年金の権利がなくなる
・遺族年金を65歳までもらえない
まとめ
・夫の年金の繰上げ受給の減額は、夫の死後、奥様の年金に影響しない
・奥様の長生きする確率が高く、長生きすればするほど受給総額は大きくなる
・減額率が0.5%から0.4%へ
・在職老齢年金の改正で、合計の上限金額が28万円から47万円へ
・減額された年金は一生続き、変更ができない
・障害年金が受給できなくなる
・寡婦年金の権利がなくなる
・遺族年金を65歳までもらえない
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